女性を愛し得る男とは

　自分で自分を尊敬できないような男に、女性を愛することは出来ない。少なくとも男は男の理想をいだいて、それに向かって努力していく姿勢がない限り、女性を愛することは出来ない。「どうせ俺は・・・」などという気持ちの男に、女性を純粋に愛することが出来るだろうか。自分で自分を尊敬できない、いや自分で自分を尊敬出来るような人間になろうと必死になっている男。そのピーンと張り詰めた精神が愛を美しく純粋にする。

　愛とは全人間的なものだ。もっとも、逆に人は人を純粋に恋することによって、はじめて男としての、女性としての理想を求めようとする気になる。

　いずれにしても、恋している男は理想に燃えている。激しく理想を追い求めている。

　だが人間は、残念ながらそんな理想的にできてはいない。理想的になろうとしてなり得ず、それでもなお理想をドロドロになって追い求めていく男の汗みどろの姿のなかにこそ、恋心があるのだ。

　ところが、今は理想を捨て、ただ安定を求めて結婚していく人が、なんと多いことだろう。