あなたを本当に愛した男は

　子どもの幼稚園についていってくれる人が、あなたを愛してくれていると思っている愚かな女、あなたを本当に愛した人は、今ごろ戦いに敗れ、男らしさと理想を道づれにしてあの世へ行っているのかもしれない。

　あなたを恋したからこそ、あなたを愛したからこそ、男らしく生きなければと悲壮な気持ちなって、涙をこらえてその男は出掛けていったのだ。

　あなたの姿、あなたの声、あなたの顔、あなたの髪、それを汚してはいけないと信じて、バカな男は、男としての責任を果たそうとしたのだ。

　あなたを愛さなかったら、あなたをこんなにまで慕わなかったら、どうして、あなたの面影をこんなにまで大切にするだろう。あなたをこんなにまで恋したからこそ、そのあなたの面影や思い出を汚したくないと思ったのだ。

　待ち合わせの時間に小走りできたあなたの相手が、その後、堕落して男らしくなくなってしまっては、あなたに申し訳ないと思うからこそ、あえて困難に挑戦したのだ。そして、その困難の道づれにしてはかわいそうだと思ったからこそ、一人で戦いに出たのだ。

　本当にあなたを恋した男は、いまごろどこかで、死にもの狂いで戦っているかもしれない。