愛と友情

　一個の人格として、互いに接するか、それとも片方の人格が強烈で他方がそれに吸収されて、恋は存在するのか。青年期の恋は後者である。どちらが望ましいかを言っているのではない。現実に人間の気持ちはどちらの形態の時に満足するか、ということを言っているのだ。
　少なくとも世の多くの男性は、自分の恋人が一個の人格者として振る舞った時、面白い気はしない。自分の恋人として振る舞った時なら、どのような振る舞いをしてもうれしい。浮気が面白くないのは、相手が自分の恋人として振る舞ったのではなく、一人の女として振る舞ったからである。その女が自分を一番好きであり、その浮気は浮気であって本気ではないと知ってもなおかつ面白くないのは、相手が一人の女として振る舞ったからなのだ。
　友情は互いに一個の人格者として接しなければ互いに満足出来ない。互いに一個の人格者として切磋琢磨していくのでなければならない。だが、生の苦しみも、恋の苦しみも成長することによってしか逃れることは出来ない。また逆に、成長することによって、生は確実に苦しみから喜びへとなるのだ。成長するということは独立した人格となることだ。