サロンのプレイボーイ達の音楽
今ではクラシックに分類されているが、かつてはクラシックではなかったジャンルがある。典型的なのはイタリア・オペラである。それは19世紀版の演歌のようなものであった。それに対して19世紀版のムード・ミュージックともいうべきジャンルが、いわゆるサロン音楽である。これを代表するのは何といってもショパンとリストであるが、伝説の名ピアニストでもあった彼らは、いわばリチャード・クレイダーマンの祖のような存在だったのかもしれない。
サロン音楽は、少し洒落たロマンチックなタイトルがつくことによっても、すぐにそれとわかる。「・・・の夢」「月の・・・」「愛の・・・」「・・・の思い出」といった具合だ。ノクターンとかバラードとかワルツも例外なしにサロン用音楽として作られている。ピアノ・ソナタの場合、副題をつけることがあまりないのと、これは好対照である(そもそもベートーヴェンの「月光ソナタ」などにしても、作曲者がつけたものではない)。ではなぜこんなタイトルをつけるかといえば、それはサロン音楽が「お金持ちのマダム/お嬢様のための音楽」だったからである。彼女らはほぼ例外なしにピアノを弾く女性たちでもあった。そもそもお金持ちの夫人か令嬢でなければ、当時はピアノなどならえなかった。サロン音楽は決して哲学書や長編小説であってはならない。それはロマンチックな詩であり、短編メロドラマ小説なのだ。
サロン音楽の美学は「甘い愛のささやき、極上のエスプリ、優雅な身のこなし、クールさ」と定式化できる。饒舌と難解な熱弁は禁物である。例えばショパンの前奏曲集作品28の第7曲(イ長調)は、この点でサロン音楽の見本のような作品だ。以前、胃腸(イ長)薬のCMでBGMに使われていた曲である。ここでは、ほとんどステレオタイプとも言いたくなるような、甘いメロディーが撒き散らされる。芝居でいえば「愛しているよ・・・」とか「君がわすれられない・・・」といったセリフのようなものである。そしてもう1つ大切なことが、その短さだ。ものの30秒もしないうちに終わってしまう。サロンでは難しい高尚な談義を延々続けてはいけない。ご婦人方をうんざりさせてはいけない。すれ違いざまの一言でもって、自分を彼女たちにとって気になる存在にしなければならない。先のショパンの作品は、実に見事な音楽による口説きの演出である。
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