リストとショパンは対照的な友人だった!

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 ショパンとリスト。不世出のピアニスト・作曲家として愛され続けるこの二人が、同じ時代に同じパリに住み、しかも親しい友人同士だっだというのは非常に興味深い事実である。現在では、人気も評価もともにショパンの方が一歩リードしているが、当時はまさに世の人気を2分した二人であった。


 リストは時代の流れの王道を行く当時の正統派なのに対して、ショパンは独自の道を歩むピアニストだった。リストのように他を圧倒する技術はなかったけれども、そもそも超絶技巧を全面に押し出すような演奏を好まなかった。大ホールで鳴り響くリストのピアノに対して、ショパンの演奏はもっと繊細で柔らかく、絶妙のタッチと独特のテンポをずらすテンポ・ルバート奏法で人々を魅了するものだった。当然ながらショパンはリストのように大きなホールでの演奏を嫌い、少人数が集うサロン・コンサートを好んだのである。二人が愛用するピアノも全く異なっており、リストが重厚でよく響き渡る音色を持つグラーフやエラールのピアノを好んだのに対して、ショパンは鍵盤が軽く、小さいけれども澄んだ柔らかい音色を持つプレイエルのピアノを好んだ。


 このように対照的な二人がお互いをどう思っていたのだろうか。リストはショパンの演奏に、自分にはない情感と微妙なニュアンスを聞き取り、これを称賛し、自分でも身につけようと努力し、ショパンの作品を自ら好んで弾くことも多かった。これに対してショパンは、リストの演奏の完璧なテクニックに驚きながらも、実は演奏も作品もそれほど評価していなかった。


 個人的なつながりとしても、リストの方は手放しでショパンを敬愛していて、彼の死後には自分で伝記まで書き上げている。これに対してショパンの方は、残された友人宛の手紙などから、今ひとつリストが苦手だったことがわかる。二人の性格を考えれば何となくわかるのである。しかし、晩年のショパンはリストのことをかなり信頼していたようである。


 ショパンとリストといえば、それぞれの愛人であるサンドとマリー・ダグー伯爵夫人との関係の変化が面白い。リストを通して友人になったサンドとマリーは、意気投合して、一時、かなり親しい関係になる。特にすでに作家として成功していたサンドに対してマリーは憧れに似たものを抱いていたし、サンドの方もマリーに興味を持って、作家になることを勧めていた。


 しかし、サンドがショパンの愛人になると、サンドとマリーの関係は変化していく。簡単に言えば、サンドがもしかするとリストの才能を凌ぐかもしれないところのショパンの愛人になった事が、マリーは気に入らなかったようだ。また、ショパンと同棲を始めたサンドが自分にあまり手紙を書いてくれなくなった事もご不満だったようで、二人の仲はいつの間にかすっかりこじれ、ついには決裂してしまう。


 今では、世界中でショパンが愛されているのに比較して、リストは「ラ・カンパネラ」を含む「パガニーニによる大練習曲」など、ピアノの可能性を広げる多数の作曲を手がけており、晩年には「無調のバガテル」を作曲し、音楽史上、はじめての無調の作品を発表して次世代への道を開拓したのである。1850年には娘婿ワーグナーのオペラ「ローエングリン」の初演を振るなど指揮者としても活躍し、音楽史に偉大な功績を残している。

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