男のやさしさを上手に引き出すには「待つ」のをやめよ。

　まず第１に、女性ははじめから根本的な考え違いをしている。

　彼女たちは、自分から積極的に相手に向かって愛情や思いやりある行動を示すように求める必要はないと考えている。

　なぜなら、女性は本来、直感的に相手のそういった要求を感じ取ることができ、相手が黙っていても全力を上げてそれに応えてあげようとするからだ。当然、男性も自分たちと同じであると思い込んでいる。

　彼女たちは、ひとたび恋に落ちると、その相手に向かって本能的に自分の愛情を目に見える形で表現し始める。全身に喜びと情熱を露わにし、あらゆる手を尽くして彼の世話を焼こうとする。愛情が強まれば強まるほど、その度合も高まっていく。

　だから、何もわざわざ自分から男性に要求する必要はないと考える。「愛情とは、決して相手に何も求めないこと！」が、彼女たちのモットーなのだ。それが他人に対して自分の愛情を示すための常識的な方法だったのである。

　こういう考え方が常識となっているために、女性は相手が自分を愛してくれているのなら、当然、黙っていても愛の手を差し述べてくれるだろうと思ってしまうのだ。

　時には、相手が本当に自分を愛してくれているかどうかを試すために意識的に黙ったまま、テストする場合もある。彼女が彼に合格点を与えるには、相手が自分の要求していることを黙って汲み取り、頼みもしないのにあれこれ気を配り、面倒をみてくれなければならないのだ。

　
　だが、こうした駆け引きは、男性を相手にした場合、少しも通じない。男性は、相手にしてもらいたいと思えば、自分からストレートにその旨を伝える。男性は、決して本能的に彼のほうから愛の手を伸ばしてくるような真似はしない。「〜をしてあげる」と自ら積極的に申し出てくることはない。彼らは、他人から頼まれる必要がある。「頼まれれば、ひと肌脱ごう」というわけである。

　だが、これは実行してみると実に難しいことがわかる。これはとてもデリケートな問題で、少しでもその働きかけ方を間違えれば、彼はおそらくそれをシャットアウトしてしまうしてしまうはずだ。といって、まったく何の働きかけもしなければ、何もしてもらえないだろう。

 　交際が始まった頃は、女性が自分の望んでいるだけのことを相手からしてもらえなくても、彼女は「それが彼の限界なのだ。その程度の男なのだ」とあきらめることもできる。そして、愛情深く、忍耐強く、そんな男に尽くし続けるのだ。そのうちに彼も努力をして自分に追いついてくるに違いないと信じている。

　しかし、彼の側は自分は十分に彼女を満足させていると思いこんでいる。彼女が自分にあれこれ細やかな世話を焼き続けているからである。

　彼は、彼女が見返りを期待していることなど少しも気がついていない。もし、そうだとすれば、彼女は自分に尽くすのを止めるはずだと彼は考えている。だが、彼女は、自分からわざわざ頼まなくても自発的に愛の手を差しのべてきてくれることを彼に期待しているのだ。

　一方で彼は、もし彼女が本当に自分の支えを必要としているのなら、彼女のほうから頼んで来るべきだと思っているし、それを待っている。だから、彼女のほうが何のアクションも起こさない限り、彼は十分に彼女を満足させていると思い、それ以上は何もしようとはしない。

　最終的に、彼女はおそらく彼に頼むことになるだろう。だが、その時までには、言いたいことを相当我慢しているので彼女の憤りは頂点にまで達している。そうなると、彼女の要求は穏やかさをなくし、ヒステリックな命令口調になってしまうだろう。

　女性の中には、口で言わなければ彼は何もしてくれない、と腹を立てる人もいる。こうなると、彼女たちはたとえ自分の要求を相手が聞き入れ、望んだことをやってくれたとしても憤りの気持ちを鎮めることができない。自分から頼まなければ何もしようとしない彼に対する怒りは、依然として解消しないのだ。