恋に苦しんだ人は

「みずから苦しむか、もしくは他人を苦しませるか、そのいずれかなしには、恋愛は存在しない」（レニエ）

　全ての恋が、そのように苦しんだり苦しませたりというものだとは思わない。しかし、許されざる恋をした人は苦しむより仕方ない。

　恋人のいる人を恋したら、自分が苦しむか、相手を苦しめるか、そして当人が二人をなっても、好きな人が変わってしまっても苦しむ。ふる方もふられる方も苦しむのだ。そうした人たちを責められない。皆が皆苦しんで、十分それに値するだけ悩むと思う。

　そして、人間がいかにどうしようもない存在なのか気づくだろう。もはや道徳家ぶった顔はしないだろう。責めることが出来るのは当事者だけだ。

　当事者たちの話し合いに任せるべきで、第三者が道徳的な見地から口を出してはならない。

　恋に苦しんだことのない人は、人間を知っているとはいえない。だが、恋の苦しみに負けてしまった人が人生を知っているとも言えない。恋の苦しみに負けず生き抜いて乗り越えた人は、人生がどんなに素晴らしいかを知るだろう。