最高の恋

　最高の恋とは、悲哀であり、遂げられぬ恋なのだ。

　一度も恋しない女性より、「たとえ別れてしまわねばならなくても、一度でも、こうした気持ちになれたことは女性の幸せだと思います」と言える女性の方が、幸せだと思う。ある女性は言うかもしれない。それだけ素晴らしい男性なんて、最近、いやしないと。確かに、その通りではある。

　だが、ただの男をギリシャの神と思い、普通の女性をミロのビーナスと間違えるのが恋なのだ。いずれにしても、片思いのなかにある女性の悲劇と幸せを忘れてしまったことを、僕は女性のために嘆く。

　「愛はすべての人にやってしまったときに、もっとも富んでいる」（グッコー）

　愛についての僕の好きな名言だ。現代の人間は、どうして、捨て身の恋をする幸福を忘れてしまったのだろう。恋から何が得られるか？　そんなことを考えて恋する女性は、恋の幸福を味わうことは出来ない。自分を恋の中に捨てることの出来る女性だけが、本当に恋の喜びと悲しみを知っているのだ。

　恋に自らを捨てることは、その恋人のために全てを捧げつくすということだ。

　恋は遊びではない。本当の恋は命がけなのだ。自分が生きるか死ぬかということだ。

　もちろん、遊びの恋がいけないとか、浮気がいけないとかいっているのではない。

　遊びの恋とは遊び以上のものではない。これはつまり、遊び以上の喜びを得ることができないということだ。