ヴィルトゥオーソ狂詩曲!

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 サロン音楽が裕福な家庭の令嬢のためにあつらえられたムード・ミュージックだとすれば、ヴィルトゥオーソ音楽はそこに出入りする花形ピアニストたちのプロモーションビデオのようなものだ。彼らはそこに自分の持つありったけの技術を詰め込む。目にも止まらぬオクターヴ、トリル、分散和音、跳躍、重音のテクニック。自分こそが世界一のピアニストであるとPRするためのショーピースが、ヴィルトゥオーソ音楽である。

 一昔前の腕自慢のピアニストたちはたいがい、名刺代わりのこうした「決め技」を1つもっていた。例えばリストはアンコールの締めくくりに必ず「半音階的大ギャロップ」という難曲を弾いたといわれる(ジョルジュ・シフラの曲芸的な演奏が名高い)。

 また20世紀ではヨゼフ・ホフマンのモシュコフスキ「スペイン奇想曲」、ジョゼフ・レヴィーンのシュルツ=エヴラー編曲「美しき青きドナウ」、ラフマニノフの自作「前奏曲嬰ハ短調」、ルービンシュタインのショパン「英雄ポロネーズ」、、ホロヴィッツの自作「カルメン変奏曲」などが有名だ(いずれも録音が残っている)。観客の熱狂が沸点に達したところでこれを弾き、アンコールを締めくくる。「万雷の喝采を得る」ということ以外に何の目的も持たない。それがヴィルトゥオーソ音楽だ。

 こうした音楽の典型は何と言ってもリスト、特にエチュードやオペラ・パラフレーズの類である(ショパンの音楽は典型的なヴィルトゥオーソ音楽というには、やや繊細に過ぎるところがある)

 リストの師であり、ピアノ学習者なら必ずお世話になる練習曲の数々で有名なカール・ツェルニーは、「演奏について」という教本の中で面白いことを書いている。カール・ツェルニーいわく、あらゆるパッセージは可能な限り聴衆に強烈な印象を与えるように弾かなければならない。いかにも難しいことをやっているように聴かせなくてはならない。それはいい悪いの問題ではなく、「いずれにせよ我々が相手にしている聴衆は玉石混淆であって、その大半は感銘を与えるよりもアッと言わせる方が容易な連中だ」というのである。

 「大ベートーヴェンの弟子だった偉いピアノの先生がそんなことを口にしていいの?」と思わず茶々をいれたくなるが、要するにヴィルトゥオーソ音楽とは「成り上がり志向のピアニストたちによる成金相手の商売」だったと考えればいい。繊細な趣味など持ち合わせていない連中を、ド派手なテクニックで仰天させ、センセーションを巻き起こす。脚光を浴びることへの尋常ではない野心こそが、ヴィルトゥオーソ音楽のアルファでありオメガである。

 ただしヴィルトゥオーソは、単なるテクニシャンとは少し違う。謹厳実直に完璧な技術でもってそつなくリストの「ラ・カンパネッラ」を弾いてのけても、それではヴィルトゥオーソ音楽にはなるまい。その生命はむしろ、1つの美学にまで高められた、あられもない拍手への渇望にある。

 こう考えるとき、19世紀的なヴィルトゥオーソ音楽の究極の到達点とも思えるのが、ホロヴィッツによるチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」の録音である。ただしトスカニーニ指揮/NBC交響楽団との正規録音ではなく、ジョージ・セル/ニューヨーク・フィルと共演した1950年の演奏会の海賊録音である。これほど聴く者を興奮させるピアノ演奏は滅多にない(海賊版のせいだろう、色々なメーカーがこれを出してはすぐ廃盤にしてしまうが、非常に有名な録音なのでインターネット等で探せば必ず見つかるはずである)。

 もちろんホロヴィッツといえば、伝統的な超絶技巧に触れないわけにはいくまい。しかしながら、あえてここでホロヴィッツへの最大のオマージュとして、「天才的なハッタリ術」と呼びたい。というのも、正確さや速さや音の大きさの点では、ホロヴィッツを凌ぐピアニストは結構いるからだ。ホロヴィッツの本当の凄さは、あたかもとんでもないことをしているように演出する技巧にある。例えばこの協奏曲の第3楽章。コーダに突入する前のカデンツァ(ピアノが単独で鍵盤を下から上まで駆け上がるオクターヴのパッセージ)の、エンジンが焼き切れてしまいそうなヒートアップぶりからして、これは途方もない演奏である。ミスタッチだらけではある。だが恐らくホロヴィッツは、瓦解のリスクを覚悟で、意図的にここまでテンポを上げているのだと思う。ホロヴィッツほどの技巧の持ち主なら、ほんの少しテンポを加減するだけで、いくらでも無難に弾くことが出来たはずだからだ。しかし無難に弾いてみせても、誰も「すごい!」とは言ってくれない。わざと危機一髪を演出してこそ、無事に着地したとき、観客は反射的に万雷の拍手を送ってくれる。このことをホロヴィッツは本能的に知っているのだろう。

 そして曲の一番最後、オーケストラと駆けっこしながらピアノが両手のオクターヴで半音を駆け上がって行くパッセージ。あまりに目にも止まらぬ速度で弾かれるので、気づいている人は殆どいないと思うが、ホロヴィッツはここで1オクターヴ余分に弾いた挙げ句、オーケストラよりも数歩早く最後の和音に飛び込んでいる。「キチンとオケに合わせて」などということはまったく眼中になし。

 喝采を得るためには何でもするーこのあられもない拍手に対する「成り上がり的がめつさ」こそ、ヴィルトゥオーソ音楽の本質である。



















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