片恋の可憐さ

「分別を忘れないような恋人は、そもそも恋人ではない」（トマス・ハーディ）

　恋について理屈を言い出したら、もはやその人は恋することはできない。恋している人に理屈をいう人は、きっと恋して悩んで苦しんだことのない人だろう。

　そしてさらに、女性の美しさについて、片恋の可憐さを思う。

　ある女性がいた。その女性はある男を恋した。そしてその男を恋するが故に、どうしても他の男に仕えることが出来ないのであった。彼女は「こんな気持で他の人と結婚しては、その結婚する相手に悪い」といって、お嫁にいかない。

　「そんな、バカバカしい。やめちゃいなさい」と忠告する人は、恋をしたことのない人である。消そうとして消えるほど、恋の火は弱いものではないのだ。そうした女性の姿の中に「女」を見るのである。

　片想いは悲劇だ。だが、決して恋することなく青春を送った人に比べて、恋に身を焼いた女性はやはり幸福なのである。

　「一度愛して失ったほうが、愛さなかったより素晴らしい」（テニスン）

　また、遂げなばなんの恋の味、という。