源氏物語の「光源氏」は平安貴族のプレイボーイ♡

　「源氏物語」の世界は創作であるが、妾がいる平安貴族は少なからずいました。しかし光源氏のように多くの女性のもとへ通う者は、ほとんどいなかったと考えられる。当時の男性貴族は嫡妻の実家に住み、経済的なバックアップも受けていました。そのため、ほかの女性のところばかりに通うのは、常識的にありえなかったはずです。
　光源氏の話はあくまで文学世界でのエピソードであって、実際の貴族階層の恋愛事情を反映したものではありません。しかし、「源氏物語」があまりに広く知られたため、「平安貴族＝光源氏のようなプレイボーイ」という印象が世間一般に浸透したものと思われます。紫式部が描いたのは事実でなく、あくまでも空想上の話である。
　紫式部自身は２０歳ほども年が離れた藤原宣孝と結婚していますが、宣孝とは結婚からわずか３年で死別するなど、彼女の現実は必ずしも結婚や恋愛に恵まれたものではなかったと考えられます。こうした環境が彼女に筆を取らせ、千年の時を超えて読み継がれる物語が生み出されたのかも知れません。
　「源氏物語」は嫡妻になることのできない女房たちにも読まれました。「源氏物語」に登場する女性の多くもまた、そのような境遇の女性たちです。当時ははっきりとした離婚の概念がなく、男性貴族がしばらく訪ねて来なくなれば、「捨てられたのかな」と思うしかありませんでした。そうかと思えば、久しぶりに来て朝まで過ごすようなこともあって、心理的に非常に不安定な状況下に置かれていたといえます。そんな女性たちが抱く「女性想いで優しい方に出会いたい」という願望を、紫式部が「光源氏」というかたちに昇華して物語化させたと言えます。それで女房たちも、「源氏物語」を喜んで読んだのでしょう。